人為的に誘導される人民元レート

人為的に誘導される人民元レート

中国では、過剰流動性バブルに由来したインフレーションが昂揚していますが、根底には、為替介入によって人民元を低めに誘導していることがあると考えられます。ここで、元の歴史を簡単に振り返っておきましょう。中国は、1994年初め、それまで二重レートになっていた元を、実質7%程度の切り下げを伴う一本化を行い、事実上のドル・ペッグ制に移行しました(正確には、元の変動を前日の対ドル相場の±0.3%とする管理変動相場制)。

 

一本化当初、1ドル=8.7元であった元は、95年以降、1ドル=8.3元で推移します。その後、中国の経常収支黒字の拡大を背景に、米国をはじめとする先進諸国から元切り上げの圧力が強まったため、05年7月に、2%強の切り上げを伴う管理変動相場制(正確には11通貨を対象にした通貨バスケット制)に移行しました。この制度では、元のドルに対する一日の許容変動幅を±0.3%とし、通貨当局による為替介入によって、元レートは人為的にコントロールされます。

 

先進諸国の切り上げ圧力から、同許容変動幅は、07年5月に、±0.5%に拡大されました。元の対ドルレートは、新制度導入後の3年間に、1ドル=8.1元から6.8元まで、緩やかに(16%)上昇しました。ところが、リーマン・ショックの煽りを受けて国内景気が悪化した08年7月に、中国は1ドル=6.8元の水準で05年以前のドル・ベッグ制に回帰しました。その後、国内景気の回復に加えて、再び元切り上げの外圧が強まったことから、10年6月に「元の弾力化」を宣言し、ドルに対する1日の許容変動幅を±0.5%とする管理変動相場制(通貨バスケット制)に復帰しています。その後、元は緩やかに上昇し、10年12月には1ドル=6.6元を割れる水準となっています。したがって、05年7月のバスケット制採用以降、5年5か月間における元の上昇幅は、20%(年平均3.7%)の緩やかなものにとどまっています。